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茶柱学園の華麗なる日常~間奏〈2〉




 もう一度、四月から教えてもらった基本を完璧に思い出してみた。正直、動作が細かくて細かくて、憶えられる気がしない。
「手前にひいて……三度……お菓子をどうぞ……」
 一つ一つの動作が絵になるように、流れるように、美しく。控えめに、堂々と。淡々と。
 どうせやるならば、指の先まで毛先まで。
「右手で人差し指を中指でたてるように……」
「上下からひとさしゆ……違う違う」
 夜露を浴びて気持ちよさそうに歌い続けるカエルたちと、キリキリと鳴き続けるよく知らない虫たちと、雨樋を通る雨水の流れが、うるさくて、心地よくて、かえって部屋の中は静まりかえる。
 一階のリビングから聞こえる鳩時計のさみしいワンコールが、私をベッドへと誘った。
 朝早めに学校へ行き、セン君と姫からのアドバイスをもらう。
「ミャーはあれだな、手の甲に力入れすぎ。かたい。こうっ! もっとふんわりとだな!」
「椀の底への穂先の当たり方が雑ですわ。もう少し細かく……」
「小指はほかの指に添えるだけだぜ」
「そっと、置くんですのよ」
 もっとこう……なんて言いながら、何とも言えないくねり方をジェスチャーしてくれるセン君だがさっぱり良く分からなかったりするのは秘密だ。けれども少しずつ上達してきているのは確実で、……確実で……? 本当に?
 先輩たちは、新茶が発酵しそうでヤバイだとか、昨年度の茶のほうが出来が良いから、昨年度のもので行くかどうかどうのこうのとか、何やら忙しそうで、とてもじゃないけど声をかけられる雰囲気じゃなかった。同級生は「まさか美弥ちゃんがピンチなわけないじゃん」と取り付く島もない。
 焦りばかりが募ってく。
「力をぬいて、サラサラっと、スナップスナップ!」
「う……うん」
「ちょっと、ミャー爪が伸びすぎですわよ」
「え? ……あ、うん!」
『………………もちつけ?』



 自分で言うのもなんだけど。私は、努力家だと思う。
バイエルを完璧に弾ききって、父さん母さんを喜ばせたかったし、だし巻き卵をうまく巻いて、料理上手だと思われたかったし、堂々としたはじめのあいさつで、運動会をより良いものにしたかった。だからバイエルは暗記するまで繰り返し鍵盤をなぞったし、だし巻き卵は濡れタオルを使って夜中まで練習したし、はじめのあいさつのためには発声練習まで徹底してやった。表情まで、練習した。誰にも秘密で、こっそりやった。
 けれどもいつだって、私の頭は真っ白になった。ピアノの椅子に座った瞬間、菜箸を握った瞬間、マイクをオンにした瞬間、私の脳内は極度の緊張でスパークした。全身の血管が震えあがって縮こまって、身体は冷えて、頭はのぼせた。
 なぜピアノなんてはじめたんだろう、なぜ卵焼き係なんかに立候補しちゃったんだろう、なぜ児童会になんて入っちゃたんだろう。どうして? どうして? と、なんど、揺れる頭の中で思ったことか。
 失敗したらどうしよう。失敗したら、みんななんて言うだろう。父さんや母さんも、悲しい顔をするのかな? 先生やみんなも、どうしてこんなやつに任せちゃったんだろう……って後悔するのかな? 「完璧な美弥ちゃん」じゃなくなったら、私の価値って、どうなっちゃうんだろう?
 司令塔を失った体は、それでも完璧に任務を遂行してくれた。
 だから私は努力家だと言える。私の、血の滲むような毎日の練習と準備で動作を叩きこまれた体は、本番ではもはや指示を受けなくてもその通りに動けるようになっていたのだ。きっとそうだ。
 ひどいアガリ症。それをカバーするための、練習。
 失敗しないための、練習。
 しかしそれがいったいいつまで通用すると思ってるの美弥!!
 今日はなんとかうまくいったようだけど、次はどうかしら美弥!!
 次こそは失敗しちゃうかもよ美弥。
 みんなの期待を裏切っちゃうかもよ美弥!!
 いままであなたが積み重ねてきた努力も、功績も、全部ぜ~んぶ、水の泡よ美弥!!
 どうする美弥? ねえ、どうする? ねえ、ねえ美弥どうする?
 どうする………………?

「やめてよ!!」
 背中に、滝のような汗が伝う。私はベッドから飛び起きていた。荒く息をつきながら、窓を見やる。
「……はあっ、まだ、真っ暗じゃないのよ……」
 カーテン越しでもわかるくらいに、空には星が瞬いている。カエルは疲れて眠ってしまっているようで、虫たちが夜明けを待ちわびて、切なげに鳴いている。布団がめくれあがっていて、足元が暗闇の空気にさらされる。どうしようもなく心細い気持ちになった。
 ねえ、どうする?
 夢の中の声が、脳内でリピートされる。
「やめて、やめてよ……」
 失敗が怖くて、こんな夢ばかり見てしまう。もう、ここ二三年のことだ。今に始まった話じゃない。もう一週間前だもんな。大抵、前日とか一週間前に見るんだ。本当に、恐ろしい気持ちになって、もうあきらめてしまおうかと、心が折れそうになる。
 今は忘れろ。忘れて寝ろと自分で自分に言い聞かせながら、強く目を瞑り、もう一度、浅い眠りに落ちた。







あとがき


久しぶりの更新です。

美弥ちゃん切羽詰まってます。

私はお点前の心得がないので、きっといろんなところが間違っているでしょう。
これでもウェブや雑誌や本や動画で、少しは調べたのですが。

良い感じの資料があったらぜひ教えてください。
資料くらい自分で集めろ、と自分でも思いますが、
こう言うことができるのも、ウェブ小説の特権のような気がするんですよね。

どうかどうかよろしくお願いします。

それでは、ここまで読んでいただきましてありがとうございました!!



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茶柱学園の華麗なる日常~エピソード〈1〉



茶柱学園の華麗なる日常 「間奏」

 

 かたり ことり のせていく
 綺麗な積み木を のせていく
 高い高い 塔をつくるの
 歪なかたちの 積み木たちに
 いつも心が 折れそうになる
 それでものせる のせつづけるの

 見上げれば、 崩壊が恐ろしく
 成功すれば、 不安が大きくなる

 ならばいまここで 失敗してみようか
 失敗してみようか……?
 

 緊張と焦りで、私の脳内はいまや沸騰寸前である。いや、もうしているのかもしれない。ああ、心臓の激しすぎる拍動が、茶筅に伝わってはいないだろうか。きめ細かく、たっぷりとした泡をつくらなきゃ。校長先生は泡の多い方がお好みだそうですから。
 最後にくるりと茶筅をまわして……まわして……ああそう言えば私の選んだ干菓子はどうだったかしら。……あれ? 私、お茶碗を回したかしら? どうだったかしら?
 大丈夫よ美弥。今日まで何回練習してきたと思っているの。自分を信じるのよ美弥。……大丈夫よ。回したような気がする。手に、そんな感触が残っているもの。大丈夫よ、大丈夫。大丈夫。
……じゃないわ。駄目。怖い。回した? ……回してない? ……ああ、ああ。なぜこんなことを引き受けたの美弥。
 昔から凝り性だった。なんでも完璧にやってみせたくて、これでもかというくらい念入りに準備して、練習して、本番にのぞんだ。ピアノの発表会はもちろん、調理実習のだし巻き卵にまで、前日準備、直前シミュレーションは欠かさなかった。おかげで私は人前で失敗したことがない。
――美弥ちゃんなら、きっとなんでもきちんとやり遂げてくれる。
なんて、きっと皆は思っているから。
まだ失敗してない。でも、今度こそは失敗するかもしれない。
駄目だ。頭が白んでいく。駄目だ……。


「じゃあ次のお茶会の新入生お点前披露は藤野美弥さんで……」
 抹茶部(茶道部)の顔であるお茶会。年に二回、校長先生をお招きして、自分たちのお点前を披露する。いくらお茶好きとは言っても、短時間に何杯も抹茶を飲むのは体に良くないので、代表者が一名選ばれるのだ。十一月の文化祭で発表される、その一年でもっとも素晴らしいお茶を淹れた、または淹れるための努力をした部活に贈られる「キングオブ茶部」の称号。その評価対象でもある(と噂される)お茶会。キングオブ茶部に選ばれると、優先的に「性格の良い」物が支給されるので、それだけに責任重大な役である。万年最下位の梅こぶ茶部なんて、椅子に座れば「重いからどけ」、消しゴムを使えば「摩擦が熱いんですけど」とどすの利いた声をあげられ――まあ最近はなんだか仲良くしてるみたいだけど――とにかくそんなことにはなりたくないというのが、生徒大半の気持ちなのだ。
「美弥ちゃんなら安心だよね~」
「完璧にやってくれるって!」
 そんなひそひそ声を背中に聞きながら、私は急激に胃の中が冷たくなっていくのを感じた。
「美弥さん、やってもらえるかな?」
「は、はあ……」
 部長の永嶋先輩の有無を言わせぬ視線に思わず頷いてしまって、そのことに気がついた時にはもう遅かったというか……私は断ることが下手みたいで、いつもいつの間にか承諾してしまう。
頑張れー!! などと歓声があがる。今更もう……断れない。
 私は手元にある四月に買ったばかりのお茶碗と茶筅を握りしめた。袋に入った彼らも、小さく震えているようだった。


「オレ様はっ! 武者震いなんだぜっ」
 茶筅のセン君がサコサコと畳の上を動き回る。
「よしなさいな。穂先が傷みますわよ。まったく、乱れた歩先で掻きまわされる私の立場にもなってほしいものですわ」
 お茶碗のわんこ姫が小さく毒つくと、セン君はびっくりしたようにかたまり、「整えて」と私を見てきた。目は付いていないわけだけれど、なんとなく、そうなんだろうなあと思う。
「……大丈夫だと思うよ。セン君、丈夫なのも売りだったし」
 やっぱオレって最強なんだなとまたもや動き回ろうとするセン君をつまみあげながら、私はもう何度目だかわからない溜息をついた。
「……どうしよう。練習あるのみ、なのはわかるんだけどね」
 けれど、練習と言ったって、どうしろというのか。
「……ミャーは嫌なのですか? 晴れ舞台じゃないですか」
「まあ……選ばれたことが嬉しくないわけじゃないんだよ。だって、普段の私が認められているということじゃない? ……ただ、それよりも、その晴れ舞台を壊してしまいやしないかって心配なんだよ」
 セン君が大きく体を揺らす。
「だーいじょーぶだってぇ~。オレ様夜だってちゃんと練習に付き合ってやるぜっ! 的確なアドバイスをくれてやるぜっ」
「……。家に帰ったらセン君も姫も喋ってくれないじゃない」
 じっとりとした目でセン君を見ると、なぜかふたりとも黙ってしまった。セン君はおとなしく私の手におさまっている。
 和室の窓から、オレンジ色の光が零れてくる。もう、みんなは帰ってしまった。後片付けをすると言って、私だけが残った。
 サラサラと霧雨が降っている。小さな粒子が光をキラキラと反射させて、遠くの赤を、じんわりとにじませている。私はぼんやりと、それを眺めた。セン君と姫も、畳の上で静かにしている。
「はあ……帰ろっか」
 私は脱いで傍らに置いておいたブレザーに腕を通し、セン君たちを巾着に入れようと、手を伸ばした。
「……私たちは、喋らないだけで、ちゃんと、ミャーのことを見ておりますのよ。ここでは校長先生のお力のおかげで、その気持ちの表現が自由にできるというだけ……」
「朝の学校で、昨日の駄目だしとかやってやらないこともないんだからな!」
 普段よりも小さな声でそっと呟かれたその言葉に、ハッとした。だから黙ってしまったのか。私は巾着の紐をゆっくりと引っ張った。
「ありがとう。……今夜から、よろしく」





あとがき

おしさしぶりです。あんみつです。

最近体調がすぐれなくて、なかなかパソコンの前に行けません。
前回の更新からかなりの間が空いてしまったこと、とても申し訳なく思っています。
今後もできるかぎりのペースで……となるかもしれません。なので、土曜日更新と言うよりは、週一更新と言うことになりそうです。
ツイッターやコミュニティで更新の情報を流しますので、申し訳ないですが、それでよろしくお願いします。

さて、茶柱学園ですが、本編がおもいきり明るい感じなので、こちらは少々ネガティブです。ネガティブ美弥ちゃんを、セン君と姫がフォローしてくれるでしょう。
正直こちらの方が、かきやす……
こちらの方が設定を活かせているような気がします。今のところ。

では、このへんで。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!!


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打倒校長編〈5〉



 秘密で持ちこんだジュースとハチミツ梅とおやつ昆布をつつきながらの歓迎パーティーは、不思議と盛り上がって、下校時間ぎりぎりまでおしゃべりをしました。峰さんは始終無表情だったので、はじめはなんだか不安でしたが、ハチミツ梅をもくもくと口に運んでいたので、それなりに楽しんでくれてたのだと思います。
 二年生の校舎と一年生の校舎は中庭をはさんで立っているので、部室の扉の前で解散をしました。

 同じ一年生の峰さんは、当たり前ですが私の隣を歩いています。横顔もなんだかとてもかっこいいです。これから三年間、同じ部活で、同級生として助け合っていかなくては、と思うとわくわくとしてきます。
「あの、えっと、峰さんは、どうして梅こぶ茶部に入ったの?」
 峰さんが立ち止まり、ユルリっとこちらをみます。
「知りたい?」
「え? う、うん。知りたい」
 なんだか不思議な動き方をする人です。あんなにすごい勢いで首を回して、痛くないんでしょうか。
「ふふふふふ」
 !? 峰さんの綺麗な顔が、あやしい笑みを作ります。
「……リボンの色がももいろで、可愛かったから……つい」
「えええ!? それだけの理由で?」
「うん」
 峰さんは頬を染めて、ふふふと笑い続けています。
「………………」
 どうしよう。もしかしたら峰さんって変な人なんじゃ。
「で、でも、ほんとにそれだけ? だって、椅子とか机とか、毒舌なのが回ってきたり、ちょっと好奇の目を感じたり、けっこう嫌なこともあるじゃない?」
 峰さんはぽやんと私を見やります。あれれ? ……部室では暗くて気付かなかったけれど、峰さん、目がきらめいてない!
「椅子とか机は、もう服従させたから、大丈夫……」
 服従!
「好奇の目は、よくわからないけど、多分慣れてる……」
 は、話を変えた方が良いのでしょうか。
「あの、得意なことは!」
「? ジャム作り……」
「そっかあ、ジャム作りかあ! 今度私にも教えてね!」
 教室について、窓の外を見やると、赤く染まった空を、カラスがゆるりゆるりらと飛んでいました。ふ、不穏な空気です。
 なんだか背中に冷や汗を感じます。
「津野田さん……!」
「は、はいい!」
 突然名前を呼ばれるとびっくりします。
「私、目標があります……」
 目標、ですか。素敵な響きですね。
「も、もしかして、二人でこれから梅こぶ茶部を頑張っていこう、みたいなやつかなあ? いいね、それ!」
 峰さんはきょとんとした顔をしています。

「ううん。私の目標は、
『打倒、校長』なの」

 峰さんの口元がにやりと歪む。
 ああ、やっぱり。この人変な人だ!

 嫌な予感がする。この先の学校生活に関わる、なんだか嫌な予感がする。ああ、やっぱり、この部活は、やめた方が良かったのでしょうか……。
「津野田さん、手をつないで帰りませんか……?」
「へ? う、うん?」
 私はこの先、うまくやっていけるのでしょうか……。
 とろろ昆布になってしまうより、恐ろしいことが起こりそうな予感がします。梅こぶ茶部……どうなってしまうのでしょうか……?
                         

                                                                   (つづく)






あとがき


USBがありがたくも帰ってきたので、火曜日ですが更新です。

なんだか微妙なところで終わりですね。今回。

ここまでが、一応高校の部誌で発表した分なんです。

で、ですね。このブログで定期的に読んでくださっている皆さんには申し訳ないのですが、
部誌で連載中の物を、先にブログにアップしてしまうのはどうなんだろう……と考えた結果、
この、「打倒校長編」は休載にしたいと思います。

しかし、茶柱学園自体の話は続けていきます。梅子ちゃんじゃない人視点の物語ですね。

次の部誌は十一月くらい……はい、とっても先です。本当に、申し訳ありません。


あ、でも、違うバージョンのも、自分ではけっこうお気に入りなので、この茶柱シリーズを楽しいと思ってくださっている方なら、そちらでも楽しんでもらえるんじゃないかなあ~と、期待五分の一、不安五分の四な気持ちです。


よかったら、これからも読んでいただけたらなあ……なんて。


では、よろしくお願いします……!!


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ランキング入ってます! ぽちっとおしてもらえたらとてもうれしいです。私のテスト結果もよくなるかも、しれ、ませ、ん。



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もうすぐ試験なので……



日記だけにしておきます。すみません。


昨日、いや、今朝ですね。午前四時三分、私の頭に新しいネタが降ってきました。きゃー!!


私、なかなか起承転結すべて思いつくことってないんですよ。これだけ文芸部で何作も書いてきたというのに、思い出す限り、起承転結の設定をしっかり考えてから書けたものって二つくらいのものです。

その一つが、このサイトの短編小説のところにある「さくら」ですね。これも、ある朝(深夜ですね)ふっと沸いてきたんですよね。

あ、まだ読んでいらっしゃらない方、じつは私の中では一番好きな作品だったりするので、ぜひ、お時間がある時にでも読んでいただけたら嬉しいです。

他の作品は、締め切り間際に苦し紛れに書いたものが多いですね。あと、ノリです。うん? 「さくら」も明日が締め切りという日に徹夜で書いたんだった……。

毎回毎回、今度こそはしっかりプロットたてて……と思っているんですけどね。


ところで、今長編小説として出していきたいネタが四つほどあります。普通の文庫本なみには長いものを書きたいと思っています。設定のボリューム的にも、そうなります。

しかしながら、なかなか思うように書けないものです。はあ。

公開は相当先となることでしょう。

当分は突発短編小説と、茶柱シリーズ、夢缶シリーズの連載が主になると思います。今後ともよろしくお願いします!




もうひとつお知らせが。

お気づきのかたもいらっしゃるかもしれませんが、このたびこのサイト、ランキングに登録いたしました。

ウェブで小説を読むとき、ランキングからとんで探してみる、というかたが多いと聞きまして。

もちろん登録するからには上位を狙って行きますけども、上位に入れるとも思ってません^^;

まああくまでアクセス稼ぎなのです。……ああ、なんて汚いっっ

けれどもこれ、拍手やコメントとならんで、読者さんの反応がよくわかるシステムなので、インの数が多いと、励みになりますね。


もしもポチリとワンクリックしていただけたら、とっても嬉しいです。


ネット小説ランキング>【登録した部門】>茶柱学園の華麗なる日常
上は、茶柱学園だけを登録しているので、今後は茶柱学園のページの最後にリンクを貼ります。

小説・詩ランキング
上は、このブログ自体を登録しているランキングです。これは更新ごとに、すべての記事の末尾にリンクを貼ります。


ランキング登録ってあるいみ、ウェブ小説の醍醐味ですよね。

よろしくお願いします。



では、来週は土曜日まで更新はないでしょう……
テスト頑張ります!!


テーマ : 今日のブログ
ジャンル : ブログ

あしもとに夢缶~中身の見えない箱~


あしもとに夢缶


片付け、もとい大掃除、もとい引っ越し準備の最中、最も困ったのが、金属製の箱だった。少し高級なお煎餅が詰まっているような、あるいはゴ―フルが詰められているような、整理箱としてはけっこう重宝するあの箱。便利だけれども、使い方を誤ると、ものすごく不便かつ面倒くさい。
金属製であるということはつまり、中が見えないということである。そしてその中身を詰めたのは、まぎれもなく私であり、けれども大昔の、である。
もしかするともしかしなくても、食べかけのゴーフルがそのまま入っていたらどうするか。苦手で呑み込めなかったシイタケを隠していたのだったとしたら……? それの蓋を開けるということは私にとって、まさにパンドラの箱を開けるのと同じくらいに恐ろしいことだったのだ。同時に、誕生日プレゼントの封をあける時のようなワクワク感も味わえるには味わえるのだけれど。
さて、目の前に、箱がある。
傾けると、カラコロという小さな音や、もっそりとした不気味な音、ザリザリとした不安な感触が、耳と手のひらに伝わってくる。なんだろう、これはなんなんだろう。
例えば給食がカレーライスだった日。うちの小学校では、調理員さんが洗いやすいようにと、食器に残ったルーを、ティッシュで拭きとっておかなければならないというルールがあった。そのままゴミ箱に捨てると、今度はゴミ箱を洗わなくてはならなくなるので、その、カレーを拭いたティッシュだけを捨てるゴミ袋(スーパーのレジ袋など)が毎回用意された。少人数のクラスだったので、まあ袋から溢れることはなかったものの、小さいものならある程度パンパンになった。それを捨てに行くのは大抵が日直だった。当然、私も何度か捨てに行った。しかしあの感触はなかなか忘れられるものじゃない。
うすいナイロン越しの、つるつると、ひんやりと、ふかふかとベチョベチョとした感触。加えてなんともいえない重み。どことなく、いつだったかに恐る恐る抱っこした赤ちゃんの抱き心地に似ていた。
私はそういったような微妙な不安を、その金属製の箱に感じたのだ。もういくつ目になるか覚えていないが、中の物が見えない箱に出会うたびに、得体のしれない何かを感じて、勇気を振り絞ってその蓋を開けるまで、少なくとも約十分間は何も手につかず、ずっとじっとにらめっこである。なんという時間の無駄だろう。

と、なんだかんだやはり仕方がないので蓋を開けた。

「うえ……」

 予想した通り、箱の中にはもっそりもそもそと、たくさんのティッシュが詰まっていた。しわしわのティッシュたち。使用済みのティッシュを見て、生理的に触りたくないと思ってしまうのは私だけだろうか。
 けれども、
「おや……?」
 入っていたのはティッシュだけではなかった。肌色の、何かが……!
 あるティッシュは、どういう意味だろうか、輪ゴムでくくられている。くくられた上で、裂かれているものもある。そして底の方には、ピンクや水色の、プラスチック製の大きなビーズや、おはじき、ビー玉などが入っていた。ああなるほど、カラコロという音の正体はこれか。あと、ぐねぐねの色あせたモロモロモール。
 そこで気付いた。ああ、これは。
 なんて懐かしいものが出てきたものだろう……!
「お人形遊び」
 これにハマることが、誰しも一度はあったのではないだろうか。女の子であれ男の子であれ、一度くらいは触れたことがあるのではないだろうか。
 かく言う私もそうだった。
 一人っ子だった私は、ぬいぐるみからキキララのちっちゃなフィギュア、小人の人形まで、とにかくたくさんの「お人形」を家中から集めてきて、ひとりおままごとごっこをしていた。人形はもちろんなにもしゃべらないが、私の中で、人形たちはすべて、人形同士で会話をし、社会を作っていた。クラスの片隅に立って、お昼休み中の風景を眺めているような、そんな感じだった。そんな「人形」の日常を、じいっと飽きるでもなく見つめ、ドラマの場面が変わるたびに、位置をずらしたり首を傾げさせたりして、意外と忙しい遊びだった。
 ネタが尽きることはなく、常にドラマが展開されていて、私はいつか見た「なんだか手がいっぱいある人(たぶん阿修羅像)」になれたらいいのにと本気で思っていた。何しろ、六人の人形が、一人の人形に駆け寄っていくシーンは、二本の手では再現できなかったのだ。口を使ったこともあった。
 保育園年長組くらい、だろうか。とにかく私はそんな感じであった。
 今思うと、ある意味天才だったのかもしれない。ネタが尽きないだなんて。

 ところで、結局このティッシュたちはなんなのかと。
 それは、小学生になりたての頃か、はたまた四、五年生の頃か、私のお人形遊びが、お人形の服作り遊びに変わった時の、その時のものだ。私はなぜか裸のバービーちゃんを手に入れて、何かを着せたくってうずうずしていたのだ。
 可愛い布がない。リボンもない。買いにも行けない。(当時の私はそれらを、私なんかでは手の届かないような高級品なのだと思っていた。)あるのは、ふわふわのティッシュと
、モールと、図工の残りのスパンコールと、ビーズとかビー玉。ん? ティッシュって白いドレス作れそうじゃない……?

 ティッシュを五枚ほど重ねて、バービーに巻きつける。上半身にはぴったりときつめに、下の方はふんわりとふくらませて。ウエストの強調のために、おなかの部分は内側のティッシュを少しだけちぎり取ってボリュームを減らし、輪ゴムできつく結わえる。胸元はかさばらせて、少し開けて、流行りの谷間ファッションを取り入れた。裾への膨らみ方が足りないのでティッシュを継ぎ足す、輪ゴムの上から帯のように畳んだティッシュ(それも二枚重ねティッシュを一枚ずつに剥いで薄っぺらくしてから)でウエスト部分をすっきりとタイトに。裾や襟元にビーズをのりで張り付けたりもした。モールで髪をアップにすることもあった。ティッシュをねじって細くして模様にしたり、わざとクシュクシュさせたりもした。ワンピースからロングドレス、いわゆるロリータファッションぽい丈の短いドレス。たくさん作った。
 わりとはやく飽きてしまったけれど、かなり熱中していたように思う。なぜか今の今まで忘れていたのだけれども、それなりに思い入れがあったのだろう、だからこうして箱に詰めたのだ。残しておこうと決めたのだ。
 
 けれど。

 私はゴミ袋の口を大きく開けた。そして思い切り勢いをつけて、箱の中身を全部袋へぶちまけた。
 なにもかも残しておきたい。でも、全部が全部、残して持っていけるわけではない。
 捨てることも大事なのだ、きっと。捨てられない症候群の私だけれど、ここは心を鬼にして、捨てるのだ。
でないと、この先どれだけの時間が、今のような、昔の懐かしいものをみて感傷に浸る、そのことに費やされるようになるだろう。無事に年を重ねていって、そうしたら、ただでさえ思い出は増えてゆくのに、いたずらに重くしていってはいけないだろう。思い出は素敵だけれど、私はいつか、このままでは自分の眼の前よりも、過去に重きをおくように、なってしまいそうで。
 かたちに残しておけば、さらに重く重たく、私の髪を引っ張りそうで。

 まあ何より、引っ越し先の部屋に入らない。それに限る。

 だからまあ、捨てる前に今くらいは思い出してたっていいじゃない。思い出してあげたっていいじゃない。心の奥に、しまいこむ時間を、とってもいいじゃない。ね。


私は深呼吸をした。そして再び片付けを始めるのだった。






あとがき

長くなりましたね。申し訳ないです。

最後の方の「ぶちこんだ」という表現、私的にあまり好きではありません。似たような感じで、もう少しまるい響きの表現はないものでしょうか。
もしも良い表現を知っていらっしゃるなれば、教えていただけると嬉しいなと思います。

前回がきらきらと可愛い感じだったので、今回はじゃっかん変態チックに。気持ち悪いと感じる方もいれば、こんなもんで変態だなんてレベル低いなあと感じる方もいらっしゃるでしょう。

だいたいこんな感じで続けていきます。

また、本来なら、今日は「茶柱~」を更新するはずだったのですが、ただいまそれが入っているusbがないので、アップすることができません。数少ない、読んでくださる皆さんには、感謝の気持ちと申し訳なさでいっぱいです。
失くしたわけではありませんので、月曜日には更新できるかと。

それでは、ここまで読んでくださったみなさん、ありがとうございました(*^^*)



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プロフィール

あんみつかりん

Author:あんみつかりん
高校で文芸部と放送部に入っています。
ここではオリジナルの短編小説を書いていきたいと思っています。

田舎の優しい風景や美味しいもの
追憶の切なさ
たとえば引越し準備の終わった空っぽの自分の部屋で、一人ぼうっと座っている時のような
たとえば廃墟を訪れた時のような
冬の海のような
胃の中がすうっと冷たくなっていきそうな
あの感じを、
文章にできたらなあと思います。

また、自分の学生生活を活かしたコミカルな学園物も書いていきたいと思います。

猫が好きです。
マンガもアニメも好きです。

萩尾望都さん、ますむら・ひろしさん、いがらしみきおさん、
大庭賢哉さん、岡井ハルコさん、緑川ゆきさん、坂田靖子さん
大好きです!

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